Pumpuiさんの“チェンマイ&北タイ旅コラム”

チェンマイを去る


■チェンマイを去る(1)


 チェンマイを離れることにした。

 実はこれを書いているのは、離れてから長い月日が経ってからだ。ずっとこのことを書けなかったのは、離れる原因を自分の中で整理できなかったことが大きな理由だろう。まだ整理できたとは思えないが、とりあえず文章にして残しておきたいと思う。

 チェンマイに住み始めた当初、私はある目標を立てた。チェンマイを離れる7~8ヶ月くらい前まで、その目標に向かって行動していた。その目標というものをここで述べる気にはなれないが、この頃の私はタイ人社会にどっぷりと浸かった生活、とまでは行かなくとも、日本語環境はほとんどなく、タイ語のシャワーをひたすら浴び続けていた。そのタイ語のレベルは当時の私の能力をはるかに超えるレベルであり、しばらくして私は心の安定を失った。心の安定を失った直接の理由はタイ語能力の欠如であろうが、間接的要因もいくつかあったと思う。




■チェンマイを去る(2)


 チェンマイでの自分の生活というものは、ある意味不安定なものだった。
 これは自分の勝手な考えであるが、チェンマイでの自分の中には、“日本人社会”と“タイ人社会”が存在していたように思う。在留邦人の方の多くは、どちらかに完全に溶け込んでいるか、バランスよく両者と付き合っているように見えた。しかし自分の場合、少なくとも日本人社会に溶け込んでいるとは言えなかった。在留邦人で気の許せる間柄にあった人は数えるほどしかいなかった(相手がどう思っていたかどうかは別にして)。もちろん、会えば挨拶を交わす程度の関係になればもう少し増えるのだが、彼らとはこちらから積極的に連絡を取る関係ではなかった。ではタイ人社会に溶け込んでいたのか、というとそんなこともない。最低限の用事を済ませるために付き合っていたタイ人は10人以上いたかもしれない(実際、携帯電話に登録されていたタイ人は10人以上おり、チェンマイ在住の日本人よりはるかに多かった)が、彼らとも親しい間柄とは言えなかった。私の概念で言うと“友人”ではなく“知人”に過ぎない人ばかりだった。つまり、友人と呼べる人物が日本人、タイ人を問わずほとんどいなかったためどちらの社会にも属せず、 またバランスよく付き合うというレベルにさえ至らずにチェンマイ生活を続けていたのだった。




■チェンマイを去る(3)


 心の安定を失ってからチェンマイを完全に離れるまでの7~8ヶ月の間、その大半をチェンマイ以外で生活していた。半分くらいはタイ国内にいたのだが、その間、ほとんどタイ語を使わない生活をしていた。タイ人社会、というよりはタイ語社会に疲れ果てていた。だからこの間、タイ人とはほとんど接しなかったと思う。最低限必要なタイ語だけを使って生活していた。買い物に行っても指さしで済ませたり、とにかくタイ語を話したくなかった。バンコクや地方都市に住む日本人の友人を訪ね歩いたり、日本から友人がやって来た時には一緒に旅行をしたり、日本にも数回戻ったりと、タイ語から離れた生活をしながらなんとか気分転換を図ろうとしていた。そして、チェンマイでの生活を終わらせる決心をすることができ、ようやくチェンマイを離れることができたのだった。




■チェンマイを去る(4)


 なぜ、心の安定を失ったのか?
 人間、誰しも壁にぶつかったり挫折することはあると思うし、これを恥じる気持ちはない。しかし、あそこまで落ち込むことになったのはなぜだろうか?挫折してから、何かできなかったのだろうか?

 居場所がなかった……。この一言に尽きる気がする。自分の性格は内向的だと思っている。この年になって性格を変えるのは難しい。学生時代から友人は少なかったが、少ない友人との関係は濃厚なものだった。タイに来て以来、連絡の途絶えてしまった人もいるが、街でばったり会えばまた以前の学生時代と同様の付き合いを始められると思っている。人間関係もそうであるが、趣味なども広く浅くということができず、狭く深くになってしまうのは自分の性格だと思う。
 挫折しそうになった時、気分転換でもできればもう少し何とかなったかもしれない。友人と話をすることもそうだ。もちろん、前述の友人(ほとんどが日本人だが)たちは、色々と手を差し伸べてくれた。にも関わらず、挫折してしまったのは自分の力が至らなかったからなのは間違いない。それは重々承知しているが、それでもあえて言わせてもらうなら、チェンマイには居場所がなかった。いや、作ることができなかったのだ。




■チェンマイを去る(5)


 ここ数年、チェンマイにはロングステイをする日本人が増えている。一人でやってくる方もいれば、夫婦で住まれている方もいる。長く住んでいる方は、皆それなりにコミュニティを築いて生活されていると思う。タイ人であれ日本人であれ、“友人”と呼ぶことができる人がいないと長く住むことは難しいであろう。私の場合、友人を作ることができなかったのがチェンマイに長く住めなかった理由だと思っている。もし、友人を作るのであれば、できれば同世代、そして似たような環境で暮らしている人が望ましい。残念ながら、チェンマイに住む事情はそれぞれ異なっているので、しばらく付き合っていると違和感が生じてくることもあると思う。その場合、長く関係を維持することは難しいでろう。
 私は、短いながらもタイ人社会にドップリと浸かった経験があるが、それ自体は苦痛ではなかった。文化の違いから、タイ人と付き合ってはいられない、と思う人もいるだろう。一方で、タイ人との付き合いはチェンマイに住む日本人と付き合うより楽だと感じる人もいるようだ。それは人それぞれで、どちらが正しいというものではないと思う。しかし、誰とも付き合わずに長期滞在を試みるのは相当な困難を伴うだろうし、何のためのチェンマイロングステイなのか理解に苦しむ。どんな形であれ、自分の居場所を作ることが長期滞在の秘訣だと、今回の経験で痛感した。

 語学力は必須ではない。身近に、タイ語はおろか英語も満足に話せないのになぜか外国人と仲よくなるのが上手な人がいる。コミュニケーション能力に長けているというのだろうか……。語学力よりも、その土地とそこにすむ人になじめる適応性が肝心だろう。元在住者として言わせていただくならば、チェンマイにロングステイをするのであれば、国籍を問わず友人を作り、自分の居場所を確保することが成功の秘訣だと思う。

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 最後に、チェンマイ在住中にお世話になったタイ人、そしてまだチェンマイにいるのか、そしてこれを見ているのかどうかわかりませんが、日本人……のすべての方にお礼とおわびをしたいと思います。携帯電話をなくしてしまい、またメールアドレスなども聞いていなかったので、ほとんどの方とはもう連絡も取れなくなってしまいました。この場を借りて、ありがとう、そして申し訳なかったです。
 また、このコラムを読んでくださった方にもお礼を申し上げます。ありがとうございました。



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