tpnさんの“タニン市場での揚げパン修行日記”(4)


第4期


■9月1日 金曜日……カリカリ、フワフワ


 昨日は、日本人がたくさん来て天気もよくにぎやかだったのですが、今日は雨になりました。雨のおかげで市場も静かでした。お手伝いの方も、のんびりムードです。
 今日は時間があり、みんなで椅子に座って話をしていました。いつも通り、お母さんの揚げパンチェックによりできのよくないものが僕に回ってきました。お母さんはNG出したけど、おいしいよ。
 そこから、お父さんと揚げパンの揚げかたについての話が始まりました。僕はタイ語がわからなかったので、“カリカリ、フワフワ”という言葉で説明してみました。「タイ人は、外側も内側もフワフワが好きでおいしいと思うんでしょ?」、「日本人は、外側はカリカリ、内側はフワフワが好きです(これは僕の好みです、ごめんなさい)。」何とかお父さんはわかってくれたようです。
 次に話したのは、火加減についてです。いろいろ聞いてみると、強火で一気に揚げたほうがフワフワに揚がるそうです。僕は、じっくり揚げて最後は強火がいいと思っていたのですが、それではダメみたいです。どちらにしても火加減は重要で、これを習得するのは当分無理でしょう。
 今日は、宝くじの抽選日。お母さんも宝くじを買うようですが、市場の店で買うのではなく、紙に書いて渡していました。買い物カゴの奥様もそうしていました。どういうシステムなのか知りませんが、お父さんも買っていたし、タイ人は宝くじが大好きなようです。当たったら大騒ぎになるんでしょうね。今日は、8時45分ごろ失礼しました。




■9月2日 土曜日……発砲スチロールのトレイ


 今日も、雨がパラパラと降るはっきりしない天気の朝でした。朝食の時に、お父さんが発泡スチロールの小さなトレイに入ったお菓子をくれました。クレープのようなお菓子で、中にはタイのカスタードクリームが入っていました。
 お母さんは、昨日の宝くじの話をしていました。末等が当たった、と喜んでいました。お父さんは今日は静かです。少々疲れているようです。やはり、休みのない営業は50歳を超えるとキツイのでしょうか。
 今日は、口数少なく仕事をしていました。仕事には、まったく支障ありません。というのも、最近、揚げ具合は僕に判断さてくれているのと、ほかの作業も僕が先を読めるようになっているからです。それでも、一休みの時にお父さんは僕に聞いてきました。それは“フワフワ”についてです。この言葉を忘れたようで、聞いてきたのです。この“フワフワ”に興味を持ってくれたことは、とてもうれしいです。発音がおもしろくて聞いたのかもしれませんが、昨日のカリカリ、フワフワに興味を持ってくれているのなら、とてもうれしいことです。無口な作業の中で、お父さんは真顔でしゃがみました。僕が捨てたお菓子のトレイを指差して、「フワフワ、フワフワ」と言うのです。何ごとかと思っていた僕は、笑ってしまいました。発泡スチロールは、確かに軽くてフワフワ……なのかなぁ?
 こうやって盛り上げてくれるお父さんに感謝です。明日は、もっとたくさん売りましょう。




■9月3日 日曜日……大変申し訳ありませんでした


 昨晩は雷雨でしたが、朝方は晴れていました。今日は、少し遅めの6時30分ごろ店へ着きました。早速お父さんから、昨日僕が帰った後に、pumpuiさんが来たと言われました。いやいや、pumpuiさんごめんなさい。平日は、7時半で引き上げるもので……。
 お手伝いはいつも通り。今日もお父さんは、「フワフワ、カリカリ。」と言ってくれました。客足も順調……。
 ところが、僕はやらかしてしまいました。いつも来るモトサイに娘さん3人と乗って来る体格のよいおばさん。このおばさんの態度が、ちょっと問題あり。何度も買いに来るのですが、口が悪いし、自分で揚げパンをいつも余計に取ろうとします。どうも聞いていると、「日本人が手伝っているから……。」と言っているのです。これを最近毎回言っているので、僕も少し気になっていました。僕は、あまり行儀のよいおばさんではない、と常々思っていました。今日も、そのおばさんはそう言って揚げパンを多く持って行こうとしました。おばさんが帰りかけた時に、思わず僕は「あの人は大嫌いだ!」とタイ語で言ってしまいました。思わず言ってしまったのですが、結構大ごとになってしまいました。まずはお母さんが、「お母さんはたくさん売らなければならないから、全然気にしていないよ。あの人は毎日買ってくれるからね。嫌いだと言ってはいけないよ。」と言ってきました。次にお父さん。「あれは、冗談を言っているんだよ。だから気にしなくていいよ。嫌いと言ってはいけないよ。」僕も理屈はもちろんわかるのですが、あの態度と毎回同じことを言ってくるのでつい言ってしまったのと、もし僕が手伝うことでこの店に迷惑がかかるならば、いつでもお手伝いはやめられる……。一生懸命、下手クソなタイ語で説明してみました。もともと、このお手伝いはお父さん、お母さんの好意でさせていただいていることです。迷惑をかけるくらいなら……ということなのです。お父さん、お母さんは色々言ってくださいました。これじゃ、あのふてぶてしいお客のおばさんより、僕のほうがお父さんお母さんにご迷惑をかけてしまったようです。お客さんがどんな人でも目の前で悪口は言わない……。これは、客商売の最低限のルールですよね。大変申し訳ありません。気持ちがおさまらないままいたところに、ガネッシュさんが来てくれました。僕は折りたたみテーブルで一緒に話しをするようお父さんに言われ、席につきました。これは、よい休憩になりました。温厚なガネッシュさんと色々話しているうちに、気持ちもすっかり落ちつていました。
 お母さんに「学校へ行くのだろう?」と言われ、時計を見ると7時40分。あわてて帰ろうとすると、お父さんとお母さん、そしてカーオマンガイ屋の兄ちゃんの通訳もまじえて、明日も来るようにと念を押されてしまいました。
 大丈夫ですよ、明日も行きますよ。安心してください。ご心配をおかけして、大変申し訳ありませんでした。




■9月4日 月曜日……顔見知り


 今日は明け方の2度寝がたたって、起きたのが5時50分。家を出て、いったんまっすぐ店へ向かいました。先週東京の友人が撮ってくれた写真のカラーコピーができたので、渡すためです。そして、競技場へ。いつも、競技場で走るのはまだ暗いころなので、もう明るいこの時間は雰囲気が違います。特に、人の顔がはっきり見えます。自転車に乗っているおばさんが、こっちを見てニッコリ笑っています。ジョギングを終えたおじさんがこっちを見ていたので挨拶すると、話しかけてきました。今まであまりよく見ていなかったのですが、店の客さんでした。そのほかにも、競技場で知り合ったおじさんに今日は久しぶりに会ったり……。そうそう、会うと寄ってくるようになった犬までいます。誰も知らなかったのですが、いつの間にか顔見知りが増えているんだなぁ……と実感しました。
 店への到着も、今日は6時30分を回っていました。いきなりお母さんが、「お前が来ないから、たくさん人が待っているよ。」と言ってきました。たくさんというけれど、いるのはふたりだけでしょ。しかも、そのひとりは競技場に来ているおじいさんでした。近寄って来て、“お手伝いをしなさい”と身振りをしてきました。その後は、お父さん。朝食をとっている僕の横に座って、色々話をしてきました。僕のタイ語では一部しかわかりませんでしたが、日本人にも色々な人がいるように、タイ人にも色々な人がいる。お前がタイ語を少ししかわからないように、タイ人のどの人がよいか悪いか、まだわからない。お父さんも、日本に行ったら同じだ。お前がタイ語を少しずつゆっくり覚えていくのと同じように、それも少しずつわかっていく……。たぶん、そんなことを言ってくれたのだと思います。昨日の一件で、まだご心配をかけていたようです。カーオマンガイ屋の兄ちゃんも、「眠い……」と言いながら寄って来ました。兄ちゃんは、取ってもらった自分の写真が太って写っていたので、気にしているようでした。彼も昨日、「気にするな。」と何度も言ってくれていました。何だか、大ごとになってしまっていたようです。まったく、お恥ずかしい限りです。僕が口に出さなければ、何ごともなく済んでいたのに……。あのおばさんの行為は今でも不愉快ですが、今後自分の行為にも十分気をつけよう、と思いました。
 ジョギングもお手伝いも、何だかんだで2ヶ月近く続けていると顔見知りも増えて、見られたり、言われたり、お世話になったり……。周囲の人たちに対して感謝の気持ちを忘れてはいけないのだ、と思いました。




■9月5日 火曜日……お坊さん8人衆


 今朝も雨あがり。この調子だとお客さんも多いはずだろう……と思いながらも、競技場でじっくり運動したので、店へは6時半ごろに到着。
 東京の友人が撮ってくれた写真をずいぶん気に入ってくれたようで、お父さんとお母さんは今日もその話。昨晩は、息子からも僕に電話がかかってきました。電話をかけてきた時刻は、お父さんお母さんは寝ている時刻。そのことを話すと、知らなかったようで喜んでいました。自分は全然写っていないのに、僕に電話をかけてくるとはなかなかできた息子です。そう言えば、お父さんが着ているTシャツは、息子が買ってくれたと言っていました。店にサイバーしに来る小柄のおばあちゃんが近寄ってきました。「走って来たのか?会えなくてさびしかったよ(別に店は休んでいないんだけどなぁ)。」お父さんが、すかさず僕に言いました。「この人は、親切な人か?」、「はい、とても親切な人です。」、「ほかの悪い人とは違うだろう。ここのみんながお前のことが好きなんだよ。」おばあちゃんも言いました。「おばさんも、お前のことを好きなんだよ。」そう言って、“食べなさい”とカーオマンガイを僕にくれました(そんなにしてくれなくていいのに。それより僕のあの言動がまだ尾を引いているのかなぁ……)。お手伝いをしていると、お母さんが大きなスーパーの袋を僕に渡してきました。中には、豆乳の袋が何個も入っています。スーパーの袋を出される時は、お坊さんが托鉢の鉢に食べ物が入らなくなった時です。サイバーをする時は、豆乳1袋と揚げパン2個。そう思い込んでいたので、誰か車の中からでも頼んだのかな、と見まわすと、お坊さんがゾロゾロとやって来ました。あぁそうか、このお坊さんたちににあげなさい、ということか……。いつものやり方で、ひとりずつに豆乳をあげていきます。1人、2人、3人……8人。全部で8人です。そして、荷物持ちが2人と小さな4~5歳のお坊さんが1人で、全部で11人。あげ終わると、「そこに座れ。」と言います。このお坊さんたちが、ありがたいお経を唱えてくれました。これだけ大勢のお経は、何だか心の奥までしみてくるようです。タイ語が上達しますように、それから……おばあちゃん、お父さん、お母さん、ありがとうございます。




■9月6日 水曜日……揃い踏み?


 今朝は、店に着いてから雨が降ったのですが、7時過ぎにはあがりました。この時期、雨が降ったりやんだり不安定なのは、しょうがないのでしょう。ここ数日尾を引いていた件はもう終わりかなぁ……と思っているのですが、今日偶然おもしろいことがありました。
 例のふてぶてしいおばさんは、いつもモトサイの後ろに娘を2~3人乗せて買いに来るのですが、今日は娘さん2人が歩いて買いに来ました。雨のせいなのかもしれませんが、もしかしたらおばさんも来づらいのかな、と思ってしまいました。それと同時に来たのが、僕が夕方よく行くカオニャウ屋のお母さんでした。カオニャウ屋のお母さんは、以前にも書きましたが、僕がここに来たころ餅米3バーツでもニッコリ売ってくれて、おまけまでしてくれたやさしい方です(最近はちゃんと5バーツ分買っています)。ここのお嬢さんがとてもかわいくて、僕のお気に入りです(すでに結婚しているそうですが)。問題のおばさん本人ではなかったですが、両極端のお客さんが揃い踏みということに、今朝はなりました。
 カオニャウ屋のお母さんは、買った後で鍋の横に来て少し話をしていきました。僕がタイ語で少ししか話せないかわりに、お父さんが色々話してくれたようです。このお母さんが帰った後で、お父さんが僕に言いました。「この人は、いい人だよ。」すかさず、僕が答えました。「ここの人は、みんないい人だよ。」
 そういえば昨晩、ガネッシュさん、ラビットさん、pumpuiさんの食事会にまぜていただきました。お手伝いの状況としてこの件を話したところ、ラビットさんから「まだ(前職の)○○根性が抜けていない!」と叱咤激励の言葉をいただきました。基本的に、職業で人の性格を決めるのは好きではありませんが、今の状況を考えるいい機会になりました。ありがとうございます。つまり、僕としては今の状況は仕事という気持ちはまったくないのですが、周囲から見ると仕事に見えてもしょうがないのでしょう。 
 はじめのころは、お父さんの好意で触らせてもらっていただけだったのですが、最近は揚げ方に関してはひとりで判断していますし、状況が少し変わってきているのかもしれません。ただ、仕事ならもっと緊張して真剣にするはずですし、もしかして、中途半端な態度や行動がまずいのかもしれません。もちろん、今でも朝食代は払っていますし、僕の気持ちもはじめのころとは変わっていません。ただ、状況が少し変わってきたという現実は考えて、行動していかないといけないのでしょう。周りのタイ人は、こんな風に考えてはいないんでしょうけどね。
 7時過ぎに雨もあがったので、この調子なら売れ行きはいつも通りだなぁ……。そう思うって、今日も失礼しました。




■9月7日 木曜日……がんばってください、応援してます


 今朝は久しぶりに晴れて、すがすがしい朝でした。気持ちがいいので、競技場でじっくり運動していたら店への到着が遅れ、6時40分になってしまいました。すぐに手伝い開始。カーオマンガイ屋の大将が、僕に向かってビール瓶とコップを持って来て、「ビールを飲め!」と大声で言ってきました。今日は飲んでいてご機嫌だな。ビールは飲まないですよ。その後も、何度か近寄って来て、今日はラムパーンに遊びに行こうとか、色々言ってくれました。お気づかい、ありがとうございます。
 今日は、揚げパンの売れ行きが好調です。小麦粉の生地の大きな固まりが、今日はひとつしかないと思いお父さんにたずねると、ひとつはもうすでになくなったそうです。今朝は忙しかったんですね。遅く来て、ごめんなさい。
 お手伝いに集中していると、コンイープン、コンイープンの声。見ると、日本人のお客さんがモトサイに乗って見えていました。サイトを見てくださっているとのこと。帰り際に、「応援しています、がんばってください。」と言ってくださいました。ありがとうございます。うれしかったです。ご覧の通り要領はよくありませんが、マイペースでがんばっていきます。その後、pumpuiさん、そしてガネッシュさんも来てくださいました。お父さんは、とてもうれしそうでした。
 今日は、あっという間に揚げパンが売れてしまったので、それを目あてに来たお客さんがガッカリして帰る姿をおふた方に見てもらうことができました。それと、うれしそうでちょっとだけ得意げなお母さんの顔もです。




■9月8日 金曜日……テンガーンパー(パートンコーと結婚)


 今朝も、昨日同様青空でした。売り上げも好調。ところが、最後で客足が止まりました。途中で、雨雲が出てきたからなのでしょう。
 pumpuiさんは、今日も遊びに来てくれました。ありがとうございます。昨日見えたガネッシュさんが店を後にする時に、お母さんに僕のことを「あの男は、揚げパンと結婚した。」と言ったようで、今日はお父さんやカーオマンガイ屋の人たちにそのことを喜んで話していました。日本で商売したら、揚げパンは1個10バーツで売れるとも言ってました。お母さん、僕は揚げパンと結婚したかもしれないですが、日本では商売はしませんよ。
 今日、揚げパンも残りわずかになったころ、お母さんがパッタイ(焼きソバ)を買って来て食べはじめました。薬を飲むので、その前に食べるのだそうです。お母さんは、指の調子が悪いので病院に通っているそうです。今日、その理由を教えてくれました。長年、豆乳を袋に入れて輪ゴムでとめているので、指がおかしくなったというのです。これも、いわゆる職業病なのでしょう。お母さん、揚げパンと結婚したのは僕じゃなくて、お母さんなんですね。体を大切にしてくださいね。




■9月9日 土曜日……週末は忙しい


 今朝も天気がよく、お母さんは一休さんを指さして喜んでいました。一休さんというのは、以前僕が作ってあげたてるてる坊主のことです。てるてる坊主という言葉はわからなくても、一休さんは有名です。
 前に、揚げ具合について書きましたが、本当にこれがむずかしいです。理屈や見た目では、確かに何とか合格できるようになりましたが……。早くあげると中がイマイチ、待ちすぎると色が濃くなります。この加減は、火の具合によっても変わってくるのです。まだまだ、と言ったところです。
 売れ行きは順調で忙しかったのですが、椅子に座っての休憩ももちろんありました。カーオマンガイ屋の兄ちゃんが一服しにやって来て、自分の仕事についてどう思うか英語で聞いてきました。もしかすると、自分の仕事に疑問でも感じているのでしょうか。残念ながら、揚げパンの手伝いが再開となり話は途中で終わってしまいましたが、後日ゆっくり聞いてあげようと思います。
 昨日、pumpuiさんが見えた時に、「ここは、タイ語を覚えるのには最適の環境。」と言っていました。考えてみると、お父さん、兄ちゃんは一生懸命、それも丁寧にタイ語を教えてくれます。お母さんも時間があれば、僕がわからないと、いろいろ表現を変えて教えてくれます。お父さんは、特に細かく丁寧に教えてくれます。今日は、日本語の“あのう”、“えーっと”はタイ語で何と言うかでした。どうやら僕が時々この言葉を使うらしく、覚えていたそうです。僕は、今でも時々日本語を使っています。ほかに日本人がいなくても、相手がタイ人でも“あっ、これですね”とか“そうなんだぁ”などといった具合です。
 反省します。明日からは、使用禁止にしてみます。タイ語を教えてくださるみなさん、ありがとうございます。




■9月10日 日曜日……ありがたいお菓子


 今朝は、霧雨よりも細かい雨がわずかに降っていました。いつ強くなるかわからないから、今日はお客さんの出足が悪いと思っていたら、大量に20個、30個と買っていくお客さんが何人かいました。お父さんに聞いてみると、雨が降りそうなので揚げパンで簡単に朝食を済ませるのだそうです。雨が降れば売れ行きが悪い、と決まっているわけではないのです。わからないものです。
 今日も、托鉢に回ってくるお坊さんに揚げパン2個と豆乳1袋をあげることを何度かしました。させていただくようになって、ずいぶんとたちました。特に、以前手首にする赤いサイシンをいただいた老僧にあげるのは、最近僕の仕事のようになっています。この老僧、ここ数日は供物がたくさんあって持ちきれないので、ここに寄った時にスーパーの袋に入れ替え、いったん預けていきます。少したってから、この先にある古本屋のおじさんがスクーターで取りに来ます。お寺まで運ぶのでしょうが、これも立派なタンブンなのでしょう。
 今日もこの老僧が来て、僕はいつも通り豆乳と揚げパンを差しあげたのですが、お父さんがお菓子を手にして僕に見せに来ました。はじめはそれも渡せ、と言っているのかなと思っていましたが、その老僧が僕にくださったということだったのです。供物をあげることだけを考えていたのですが、まさか逆にいただくとになるとは……。ありがたいお菓子を、ありがたくちょうだいすることにしました。
 その後、小柄のおばあちゃんがいつもより遅めに来て、僕にカーオマンガイを食べなさいと置いていきました。これもおばあちゃんの好意なので、いただくことにしました。ありがとうございます。でも、いったいここの人達にとって、僕はどのように映っているのでしょうか。みなさん、ありがとうございます。




■9月11日 月曜日……朝起きた人、徹夜明けの人


 今朝は曇りで、雨は降らずまずまずの天気です。今朝も、いつもの老僧が僕にあげなさいとお菓子を置いていきました。お菓子は嫌いなのでしょうが、お寺に持って行ってほかの人にあげないのでしょうか。最近のお手伝いの状況を説明すると、作業自体はわかってきたのでそのことでお父さんとはほんの少しの言葉をかわすだけです。鍋に生地を入れるのは全部か?生地に水をつけるのを飛び飛びにしなさい(切りわけた生地の列が奇数の場合、最後の列はひとつおき)……。はじめは、色々聞いて確認していたのですが、今ではしていません。とはいえ、タイ語を教えてもらったり、雑談をしたり、ほかの話題は色々話しています。
 今日は店に行くと、サイバーのお客さんがたくさんいました。店の前には、若い女性5人と男が1人、一生懸命お祈りをしていました。サイバーは色々な人がします。早起きしてきた人、夜通し飲んで徹夜明けの人、これから商売をする人、赤ちゃんと一緒に3人でする夫婦……、本当に色々です。僕が思うのは、サイバーが終わった後の顔はみんなすがすがしい、にこやかでいい顔をしているということです。
 今朝は忙しかったので、僕は朝食をとる前に揚げる作業を黙々と行っていました。お父さんとはあまり言葉をかわさずに。お父さんが、「生地で鍋がいっぱいになったので、入れるのを止めなさい。」と言ってきました。いつもは“鍋に落とす”と言っているのに、今日は“入れる”を使っていました。「入れるも落とすも同じなのですか?」と下手なタイ語でたずねました。サイバーをしていたグループが、この僕の下手クソなタイ語に気づき、どこの国の人なんだ?という話になったようです。こうなると、お母さんの出番です。僕が何も言わなくても、一部始終説明を始めます。日本人と知ると「おはよう。」と言ってきたので、「ありがとうございます。またお越しください。」とタイ語で言ってあげました。
 最近、お父さんから“またお越しください”、“お待たせしました”、“少々お待ちください”とか、そんな言葉を教えていただいているので。




■9月12日 火曜日……ベンツのお気に入り?


 今日も、相変わらず色々なお客さんが来ていきました。おばあちゃんからは、カーオマンガイをいただきました。競技場でいつも会うおばさんからは、スターフルーツをいただきました。最近来る、中国系のご婦人とも競技場で会って、店でもお会いするようになりました。そして、常連のベンツに乗ってくるちょっと恐そうなおじさんもやってきました。いつも席について豆乳と揚げパンを食べ、一言二言話して帰っていくのですが、今日は違いました。pumpuiさんに色々話かけていました。“名前は?”、“何を知っているか?”……。日本語で、ご飯を食べるとトイレをするは何と言うのかも聞いてきました。この2つを覚えていれば、日本に旅行に行っても大丈夫だ、というようなことを言っていました。このおじさん、こんなに話しかけてきたのははじめてでした。何か、よいことでもあってご機嫌だったのでしょうか。僕はpumpuiさんが気に入ったんじゃないかな、と思います。
 椅子に座っているだけでも、次から次へとお客さんが来て、色々話かけてくれます。今日は、特に日本人が2人並んで座っていたから珍しかったのでしょうか。お父さん、明日はキチンとお手伝いさせていただきます。




■9月13日 水曜日……明日は


 今朝も、空は明るく雨の心配はなさそうでした。でも霞みが強くかかっていてドイステープが見えないのは、天気が悪くなるということなのでしょうか。
 今朝も、いつも通りのお手伝いです。今日も、小柄のおばあちゃんが来て色々僕に質問をしました。“仕事はしないのか?”、“これからどうするのか?”、“どこに住んでいるのか?”、“いつ日本に帰るのか?”……。仕事もしないでこんなところで遊んでいるのは、不思議に映るのでしょう。おばあちゃんが「今日もカーオマンガイを僕に買う。」と言ったところ、お母さんが「今日はナムプリックともち米をあげるのでいいよ。」と話していました。今日は、お母さんからお昼をいただくことになりました。
 何人かからいつも「朝食は済んだか?」と聞かれますが、「済んだよ。」と言うと不思議な顔をします。僕にとって、朝食は揚げパンと豆乳なのですが、タイ人にとってはそれは朝食ではないそうです。ちょっと、僕にはわからないところです。おばあちゃんからいただくカーオマンガイは昼食として食べているのですが、おばあちゃんとしては朝食として部屋に帰ったらすぐ食べなさい、ということなのでしょう。お母さんからもらうものも、同様です。
 今日は、折りたたみテーブルで食べていくお客さんが結構いました。揚げ具合に集中していると、“お坊さんが来たのでサイバーだよ”、“お客さんが帰ったから皿とカップを片づけなさい”、“鍋から揚げパンをあげなさい”……。今日は、色々指示が出ます。いつの間にか、タイ語が少しずつわかってきているような気がして、少しだけうれしかったです。折りたたみテーブルで食べていたお父さんと小学1年生の親子がいたのですが、お父さんが僕に色々話かけてきてくれて、僕の話を聞いた後(もちろん、お父さんお母さんのていねいな解説付きです)で、揚げパンを5つおかわりしてくれました。これまた、うれしくなりました。みなさん、ありがとうございます。
 明日は、午後3時から家で仕込みを手伝わせてくれるということになりました。おもしろい報告ができるとよいのですが。




■9月14日 木曜日……3時か4時か


 今朝も、天気がよかったのでボチボチでした。最近、作業について指導されることといえば、揚げパンを鍋から運んでバットにあげる時に、ジャーレンを一気に返しなさいということです。僕は返すのに慣れていないので、少しずつ落としています。これが、お父さんは嫌いなようなのです。そして、今日は久しぶりに指導がありました。生地を鍋に入れる際に、2つの生地をくっつけて鍋に投入するのですが、くっつけてからキチンと引っ張って伸ばして入れるように、とのご指導でした。形はには影響ないのかもしれませんが、火の通り方やふくらみ方には影響するのかもしれません。研究してみようと思います。
 今日は、いつもお客さんで来られるTさんが声をかけてくれました。お客さんに背を向ける形で作業をしているので、気づくのが遅れてごめんなさい。いつまで頑張るんですか?と質問されました。今後も、キチンと考えます。
 今日は、午後にお父さんお母さんの家に来るように言われていました。僕が道を知らないので、昨日の話ではお父さんが午後3時に迎えに来てくれることになっていましたが、今日になって店の帰りに自転車でついてきなさい、とのこと。そして、出直して夕刻仕込みのお手伝い(見学?)とのことですが、お父さんは「午後3時に来い。」と言います。お母さんは、「3時に起きるので(3時までは寝ているのです)4時に来い。」と言います。「じゃぁ3時半。」と言っても、お父さんは3時に来いと言います。僕が早く行ったところで、何がはかどるわけでもないし……。「3時に部屋を出ます。道に迷うから、遅く着きますよ。」そう答えました。家についていって朝食をいただきましたが、お父さんもお母さんもさすがに疲れた様子。
 早々に退散しました。お父さんもお母さんも、若くないですからね。




■9月15日 金曜日……家では


 今日も、雨は降らず売り上げもボチボチでした。今朝は、ラビットさんとラビットさんの友人がお見えになりました。お手伝いはいつも通りなので、今回は昨日の夕方にお父さんの家へおじゃましたことを少し書こうと思います。
 午後3時半過ぎに到着すると、何やら機械音がしていて、すでに明日の準備が始まっていました。まずは豆乳の作業で、お父さんは大豆をつぶしていました。お父さんは、いつもはかけない老眼鏡をかけて作業をしていました。細かいところを見るためでしょうが、いつもと違う表情です。すぐに、お手伝いをさせてもらいました。タイのタウンハウスの狭いスペースで作業をするのはたいへんです。お母さんがサポートするのですが、その呼吸の合っていることといったら、さすがでした。豆乳の仕込みが終わったら、今度は揚げパン生地の作業です。こっちもたいへんで、粉と水を混ぜ合わせるだけでも重労働です。
 今日は生地と豆乳だけでしたが、これ以外にもサンカヤー(タイのカスタードクリーム)の作業もあるのです。途中で、息子が帰って来ました。息子も、一緒になって手伝いをしていました。とはいっても全部できるわけではなく、お母さんがいない時はこの作業をお父さんがひとりでするそうです。作業が終わった時には、お父さんはぜいぜい息があがっていました。お母さんは、このほかに家事をこなさねければなりません。56歳と53歳の作業としては、大変キツイ作業だと感じました。
 店では、元気で愉快なお父さんとお母さんですが、こんな重労働を毎日休みなくやっているとわかると、頭が下がる思いです。何でも仕事はそうだ、と言えばそれまででしょうが、揚げパンひとつ1バーツ、豆乳1袋3バーツ……。買うのも食べるのも簡単ですが、稼ぐとなると何とたいへんなことか。色々、いい勉強になりました。




■9月16日 木曜日……ありがとうございました


 今朝はだんだん雲行きが悪くなってきて、売り上げもイマイチ。お客さんはまばらに来るのですが、豆乳の売れ行きはよくないようです。
 今日は、タイ語学校の友人Y君がタイ人の彼女と様子を見に来てくれました。ちょうど作業が一段落したところで、しっかりと作業をしている姿を見せることができなくて少し残念でした。豆乳も揚げパンも“おいしい”とおかわりしてくれて、帰りに豆乳3つと揚げパンを10個も買っていってくれました。やっぱり、おいしいと言ってもらえると、うれしいものです。
 お母さんは、今日はしっかり代金をいただいていました。いつも、日本人の知人が来ると「いらない。」と言っているのですが、今日はタイ人がいたからなのでしょうか。たぶん、たくさん買っていってくれたからだと思いますが。最近、日本人の知人が来てくれるようになって、お父さんもお母さんもうれしいようです。タイ語学校の別の知人も、「今度行くね。」と言ってくれました。
 今朝、タイ語学校つながりの知人が市場で買い物をして、自転車で帰るところを見かけましたが、揚げパンと豆乳も買ってくれたようです。タイで揚げパンと豆乳がこんなによく食べられているとは、お手伝いをするまで知りませんでした。これからも機会があるたびに日本の方にもお知らせして、より多くの人に食べてもらいたいものです。




■≪第4期の日記を終えるにあたって≫


 今年の6月上旬に、タイ語を学びにチェンマイに来てからずいぶんたちました。長期滞在を始めてすぐに、ひょんなことから始まったこのお手伝い日記もいったん終了したいと思います。
 僕としては、大好きなチェンマイで地元の人達と触れ合い、さらに彼らが僕のことを受け入れてくれたこと(自分ではそう思い込んでいます)に大変感謝をしています。
 最初は、生のタイ語が聞けること、物を作るのが面白かったこと、タイの人の行動を目のあたりにできることがおもしろくて続けていたのですが、いつの間にかお父さんお母さんからあてにされるようになってきてしまいました。
 過剰な期待は、それがかなわなかった時の落胆も大きなものになってしまうと思っています。もし僕のタイ語が上手であれば意志の疎通もうまくいくのでしょうが、今はタイ語の上達(しているかどうか……)がそれに追いついていない状態です。
 この辺で、いったん区切りをつけるのがよいのではないか、と思った次第です。もちろん、まったくあの界隈に行かない、というわけではありません。これからも時々、あそこで知り合った人達の元気な顔を見に遊びに行こうと思っています。



海外発航空券も可、当日予約OK!!



| (3)に戻る | (5)に進む |



HOMEへ レポートを書く TOPへ