ブアさんの“対照研究 「マイペンライ」~日タイにおける解釈の違い~”

6.雇用主とメイドの間での「マイペンライ」


1.メイドのアイロンがけについての実例

 実例12と実例13はいずれも雇い主がメイドにアイロンを頼んだ時の会話である。
 今回の調査の実例12の(1)のタイの社会で実例12のようなことがあるかという質問についてでは、「非常によくある」と回答した日本人の回答数と「ときどきある」と回答した日本人の数は30.5%と一緒になった。タイ人の回答も「非常によくある」45.4%、「ときどきある」31.8%となり、タイの社会でこのようなことがあると言える。しかし、日本人の回答で「ない・聞いたことがない」が18.0%あった。理由としては、現在メイドを雇っている人がいないためだと思われる。また、タイ人からも「メイドを雇ったことがない」という意見があった。
 実例13(1)について今回の調査では、実例12で一番多かった項目が「非常によくある」だったのに対して、「ときどきある」という回答が日本人31.9%、タイ人45.4%となり、実例12よりは頻度は少ないことがわかる。1997年の調査でも実例12のタイ人の一番多い回答が「非常によくある」だったのに対して実例13のタイ人の一番多い回答が「よくある」だった。日本人の回答は「わからない」が多い回答となっているので、前と一緒で何とも言えない。
 (2)の失礼さを問う質問において実例12では、今回の2005年の調査も1997年の調査も日本人、タイ人同様に「失礼ではない」という肯定的な項目が日本人もタイ人も同様に一番多い結果となった。その理由としては両者とも「もう一度かけ直すという対処をしている」「きれいに仕上がっていないことを認めている」などほぼ同じ回答になった。しかし実例13では今回の調査も前回の調査も日本人、タイ人同様に、「やや不適切」「不適切」という否定的な回答が一番多い結果となった。これは実例12のようにメイドが雇い主の指摘を素直に聞きやり直すか、実例13のようにやり直さないで「マイペンライ」を使って自分の過失をごまかすようなことをしたかによって結果がかわったということだと思う。タイ人のこの項目を選んだ理由は「自分が悪いのをわかっていない」「雇い主にしたがっていない」「メイドがこのように答えるのはよくない」などがあり、雇い主とメイドというような関係の時は「大丈夫です。やり直します。」の意味での「マイペンライ」の使い方はできるが、「気にすることはないです。よく見なければわかりません。」の意味の「マイペンライ」はふさわしくないことがわかる。やはり、上下関係がしっかりした状況で、自分に非がある場合は「マイペンライ」を使って、意見を正当化することは日本で考えられている常識と同じでタイ社会でもよくないことなのである。また、タイ人の「やや失礼」と回答した人の理由の中に「謝るべき」と2人が回答している。タイ人はすぐに謝ると言われている日本人と違い、自分に非がないと謝らないと言われているので、実例13のようなメイドの言葉はメイドに非があることが証明されている。

2.メイドの鍋洗いについての実例

 (1)のタイの社会で実例14のようなことがあるかという質問について今回の調査では、日本人もタイ人も同様に回答で一番多かったのは、「ときどきある」で、日本人41.6%、タイ人38.6%という結果になった。そして二番目に多かった項目も両者とも「非常によくある」という項目であった。1997年の調査でも「よくある」という項目がタイ人の回答によると100%となり、全ての人がタイ社会でこのようなことがあると回答している。日本人の回答は前回にも述べたように、「わからない」という項目の回答数が93.4%だったので何とも言えない。しかし、今回の調査と前回のタイ人の回答より、タイの社会で実例14のようなことがあると言ってよい結果となった。しかし、今回の日本人の回答は、「ない・聞いたことがない」という項目が二番目に多い「非常によくある」と同じ回答数という結果より、日本人は実例14のようなことに遭遇している人があまりいないとも言える。それは前にも述べたように、現在メイドを雇っていない、雇ったことがないという日本人が多いことが理由の一つであると思う。
 (2)(3)(4)の適切さ、失礼さ、責任感についての質問に対しては今回の調査でも、前回の調査でも両者共に否定的な回答が過半数を超える結果になった。「ブラシを使わないときれいにならなかったのかもしれない」「メイドはきれいにしたいと思ったから」などの回答理由もあったが、「やめてほしいと言われたことはやめてほしい」「雇用主に従うべき」という回答が多く、実例12、実例13と同じように、雇用主と雇われたという場合にはある意味上下関係があり、雇用主の言うことに従うべきであるということであると思う。タイ人の回答に「メイドはこのように言ってはいけない」とあることもあり、今回の実例14のような場合に雇われている身であるメイドは「マイペンライ」を使って意見を述べることは適していないと言える。今回の場合、もし本当にブラシを使わなければ落ちない汚れがある場合には、ブラシを使う前に雇い主に聞くなどの対応ができたと思う。前もって聞いていれば雇い主もメイドも気分を悪くしなくて済んだと私は思うが、このメイドは任された仕事だから一人で判断し、仕事をこなしたのかもしれないとも考えられる。また、日本人である私はこう考えるが、タイ人も一緒なのか、それとも違うのかは、今回の調査ではわからなく、もっと追求するためには新たな調査が必要である。



1台で、世界の330以上のネットワークが使え、160カ国以上で利用が可能!




HOMEへ レポートを書く TOPへ