ブアさんの“対照研究 「マイペンライ」~日タイにおける解釈の違い~”

5.会社の中で使われる「マイペンライ」


1.頼まれた荷物についての実例

 (1)のタイの社会で実例10のようなことがあるかという質問について1997,8年の調査で日本人の回答は「よくある」9.8%、「わからない」88.5%だったので何とも言えないが、タイ人の回答は「非常によくある」78.9%、「よくある」21.1%となり、2005年の調査と同様になった。このようなことから実例10のようなことはタイ社会においてよくあることがわかる。また、今回の2005年の調査では「非常によくある」31.9%、「ときどきある」36.1%となり、日本人も実例10のようなことに日本人も遭遇していることがわかった。
 (2)の適切さに対する質問において今回の2005年の調査では日本人もタイ人も同様に否定的な回答が多くなった。1997年の調査でも否定的な回答が肯定的な回答よりも多くなった。興味深いのはタイ人がその項目を選んだ理由で、「駐在員の頼みごとに関心を持っていない」という回答があった。これはどういう意味で使われているのかと思う。自分のことではないからという意味なのか、それとも駐在員が日本人だから日本人とタイ人の間には民族が違うために起こる壁があるということなのかといろいろ考えられることはある。また、タイ人自身が「他人に頼みごとをしても80%やってくれない」という回答もあった。88人中たった1人の人の回答ではあるが、やはりそういうことがあるのかと思わせる。こう答えたタイ人に詳しくインタビューするなどして話を聞かなくては詳しいことはわからないので今回の調査でその内容がわからないことは非常に残念である。
 (3)(4)の失礼さ、責任感についての今回の調査、1997年の調査はタイ人日本人同様に、やはり否定的な回答である「やや失礼」「失礼「やや無責任」「無責任」という回答が多かった。その項目を選んだ理由としてタイ人は、「責任を負うべき」など日本人と同じ回答もあったが、「関心がない」「タイ人社員はそれができるほどの能力がなかった。しかし彼には責任がないと言える」などの回答があった。これはどういうことなのかと思う。日本社会の会社では、前にも言ったとおり“忠誠、貢献、協調性が積極性よりも大切とされるようである。”(G.P.スケーブランド S.M.シムズ,1995,P.467)とされており、関心を持っていないなど問題外とされる。また、能力がなかったということは日本のビジネスの場では認められないように私は思ってしまう。しかしこういう意見がある以上そういうケースもあるということになる。そして、日本人のこの項目を選んだ理由に「有言不実行。しかし、タイ人同士はこれでうまくいっているのでタイでは無責任ではないのかもしれない」という回答があった。また、もう一つ私を混乱させる要因の一つとして、日本人から「今はもうタイ人がビジネスの場で「マイペンライ」を使うことはない」と言われたことがある。やはり、私の今回した調査だけでこのことに結論を出すのは難しい結果になった。

2.運転手への伝言についての実例

 (1)のタイの社会で実例11のようなことがあるかという質問について今回の調査では、日本人もタイ人も同様に「ときどきある」という回答が一番多く、日本人45.8%、タイ人52.2%となり日本人はほぼ半数の人、タイ人は過半数の人がタイ社会でこのようなことが「ときどきある」と回答する結果となった。1997年の調査でもタイ人の「よくある」と回答した人が68.4%、「ある」と回答した人が26.3%となった、日本人の回答は「わからない」88.5%というものだったので何とも言えないが、タイ人の回答だけを見てもタイ社会で実例11のようなことがあると言える。
 (2)の責任感についての質問について1997年の調査では肯定的な回答をした者は、日本人よりもタイ人の方が5.3%多く、否定的な回答でもタイ人の方が7.0%多い結果となった。今回の2005年の調査では、肯定的な回答をした日本人は5.5%、タイ人は12.4%となり、前回の調査と同じくタイ人の回答数の方が多かったが、否定的な回答をした日本人は97.0%、タイ人は82.8%となり日本人の方が否定的な回答をした。しかし、日本人もタイ人も同様に否定的な回答が過半数を大幅に超え、かなりの人が否定的な回答をした。このことから実例11のような時に「マイペンライ」を使うことは適切ではなく、相手を不快な気持ちにすることが言える。興味深いこの項目を選んだ理由としては、「駐在員は外国人だからもっと気を使ってお世話をしてあげるほうがいい」という回答があった。これは日本人のビジネスの場はこうであるという常識のレベルで考えるものではなく、駐在員は外国人で日本人だから気を使うべきというものである。もし、タイ人上司や同僚が伝言を頼んだとしたら伝言を忘れてもいいということなのかと疑問に思う。やはりタイのビジネスの常識は私もタイで仕事をした経験がないので、今回の調査の時点ではよくわからなかった。しかし、タイ人で職業が会社員の人の回答では、「メモをとるべきだった」「頼まれた後にすぐすべき」などの日本人と同じ意見が多かった。






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