蘭菜太郎さんの“チェンマイ裏街道”


第4話:ヤミ宝クジ


 タイで最もメジャーなギャンブルといえば、恐らく宝クジだろう。ここチェンマイでは、レストランで食事をしていると、売り子の女性がテーブルを回って売り歩いている姿をよく見かけるし、実際にそれを買っている人も多い。しかし、変な言い方ではあるが、こうした宝クジよりももっと人気のある宝クジがある。それは、市販(公認)の宝くじではない、いわゆる「ヤミ」宝クジだ。

 タイでは、毎月1日と16日(当日が祝祭日の場合はその翌日)に宝クジの抽選が行われる。公認の宝クジの番号は6ケタになっているが、ヤミの宝クジの場合、賭けることができるのは、1~3桁の数字だ。仕組みは極めて簡単で、公認の宝クジの1等の当選番号を前半分・後半分の3桁づつに分け、それぞれが当選番号となる。したがって、賭ける時にも「前で123」とか、「後ろで45」といった張り方をする。
 賭け金は自由であるが、ホテルに勤めている女性スタッフなどに聞いてみると、ひとつに5Bとか10Bとかが一般的なようだ。しかし、数字の順番もピタリと当てなければ当選とならないため、「123」であれば、123・132・213・231・312・321と6通り賭けるケースが多く(1~2桁の場合は下1桁もしくは2桁のみ)、ひとつ5Bでも払うお金は30Bとなるので、トータルすると結構な金額になってしまうようだ。筆者はだいたい1回に1,000Bくらい買うが、これくらいの額になるとお得意さんということで、20%割引してくれる(もちろん当選金は満額もらえる)。当選金は、3桁の場合500倍、2桁の場合50倍、1桁の場合5倍であるが、1桁に賭ける人はまずいないらしい。

 友人のブン(仮名)は、この「ヤミ」宝クジのディーラーをしている。彼は自身で約100人、日系メーカーの工場で働く奥さんが職場で約60人、合計約160人のお客を抱えている。
 毎月1日と16日が近づいてくると、彼の自宅には次々とお客がやって来ては金を張っていく。ブンはお客が数字を言うと、それを次々と「ヤミ」宝クジ専用の“台帳”に記入していく。この台帳(写真)はキチンと印刷されたもので、レポート用紙のように数10枚が1冊に綴られているが、もちろん一般の文具店やスーパーで売っているわけがなく、彼の弁によれば「持っているだけで捕まる」ものらしい。
 台帳に記入が終ると、お客には賭けた数字と金額、そのお客の名前を書いた紙片を渡す。これがお客にとってはクジの券となるわけだ。販売は、抽選当日の昼ごろまで行われ、その後彼は“台帳”と賭け金を胴元へ持って行く。胴元は、チェンマイで仕事をしている、とある高級官僚で、タイのことを多少知っている人なら名前を聞いただけですぐわかる、国王陛下から卒業証書を直接いただける大学を出ている超エリートである。
 ほとんどおおっぴらに「ヤミ」宝クジが行われていること自体、普通の日本人には驚きであるが、さらに胴元がそんな人物であるということを知った時、このエッセイのタイトルであるところのタイの「裏街道」の奥の深さを垣間見た気がした。



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